ライブ配信イベントレポート
Gift Music : 祈りが繋げる未来への橋
音楽と祈りの「恩送り」
2020年4月〜8月に渡り、ライブ配信イベント「Gift Music : 祈りが繋げる未来への橋」が行われました。
このイベントは、新型コロナウイルスまん延の状況下、心の平安のための祈りと音楽で人々を繋ぎ、音楽と経済の循環を創り出していく試みです。
イベントの趣旨に賛同いただいた演奏家、映像クリエイター、音響スタッフ、スチールカメラマンの手によりライブ配信を「恩送り」していただき、また、その心に共感した視聴者の方々からドネーションを「恩送り」していただきました。
日本、アラブ、インドの伝統音楽の演奏家同士が、LIVE配信を見たりSNS上でやり取りをしたりするなど、普段違う場で活躍している奏者同士によるオンライン交流が進みました。
12月6日にはギフトミュージックの第7回として、箏・胡弓・笙・ウード・パーカッションによる演奏会・ライブ配信を、21日には今回のGift Musicに参加した演奏家を中心にしたシルクロード ・アンサンブルによる演奏会の実施と映像収録・ストリーミング配信を予定しています。それぞれの国、文化の相互理解を促進し、異質なもの同士の共存とコラボレーションの可能性を伝えるコンセプチュアルな演奏会となる予定です。
ダイジェスト
ドキュメンタリー Gift Music
第一回 雅楽
祈りが繋げる未来への橋「正覚寺ご祈祷&雅楽奉納演奏LIVE」@実相山 正覚寺
2020年4月18日(土)
出演者:
- [龍笛・排簫]中村香奈子
- [篳篥・歌]三浦元則
- [笙・ナビゲート]大塚惇平
曲目:
- 「平調調子」
- 「管絃 五常楽急」
- 「朗詠 嘉辰」
- 「曹娘褌脱」芝祐靖 復曲
- 「舞立 迦陵頻急」
コロナウィルスまん延の状況下、古来より祈りが行われてきたお寺より、多くの方へ祈りと心を癒す音楽をライブ配信で「恩送り」するプロジェクト「Gift Music : 祈りがつなげる未来への橋」。
豪雨の中でスタートしたものの、ご祈祷が始まる頃には小雨になり、ご祈祷が終わる頃、そして奉納演奏中には日の光が差す場面もあり、終了後には青空が広がりました。
ライブ配信は、正覚寺 鬼子母神堂の縁日に行われた満願会の様子から始まりました。満願会は本来、参拝者の願いを鬼子母神に届けるためのものでしたが、今回は、特別に新型コロナウィルスまん延の早期沈静化を願ってのご祈祷となりました。日蓮宗のご祈祷は迫力のある独特のもので、特に木剣を用いたご祈祷の場面はその場に僧侶の放つパワーが満ち満ち、満願会のクライマックスとなりました。
池田住職からは仏教のお立場から、「“良い悪い” “善と悪”のように判断を極端に二極化することなく、物事の様々な側面を認め、バランスのとれた見方をしていくことが大事」であると、新型コロナウィルスまん延の状況下にある私たちへ、メッセージをいただきました。
雅楽の奉納演奏では、雅楽古典の演奏と、雅楽演奏家・作曲家の芝祐靖氏の「曹娘褌脱」より「颯踏」を演奏させていただきました。特に、中村香奈子さんによる、正倉院復元楽器・排簫の演奏は堂内に美しく響きわたり、また、三浦元則さんによる「嘉辰」の朗詠は、明るい未来への祈りとともに奉納させていただくことができました。
アーカイブ
- 共催:実相山 正覚寺
- 撮影・配信:natural Paradox
- スチール撮影:唐亨
第二回 胡弓
祈りが繋げる未来への橋「日本・シルクロードの音楽で紡ぐ祈りのリレー Live配信」 @星頂山 妙福寺
2020年5月4日(月祝)
出演者:
- [胡弓]木場大輔
プログラム:
- 「越殿楽」
- 「鶴の巣籠」
- 「襲(かさね)」木場大輔 作曲
- 「アメイジンググレイス」木場大輔 編曲
「Gift Music :祈りが繋げる未来への橋」第2回目は5月4日、大田区の洗足池のほとりにある星頂山 妙福寺にて、胡弓奏者の木場大輔さんによる演奏のライブ配信を行いました。
シルクロードジャパンの大塚によるプロジェクトの説明から、妙福寺の藤井副住職のお話、木場大輔さんによる胡弓の演奏をYouTubeにて配信しました。妙福寺は日蓮上人が洗足池で足を洗った際に袈裟を掛けたという「袈裟懸けの松」を守るために建てられた「御松庵」がルーツのお寺で、藤井副住職からは歴史にまつわる様々なお話をいただきました。
木場大輔さんの演奏は「越殿楽」から始まり、「鶴の巣籠り」、自作曲「襲(かさね)」から、最後に「アメイジンググレイス」を演奏いただきました。なかなか耳にする機会の少ない胡弓のソロ演奏の素晴らしさを皆さんにお聞きいただくことができました。
アーカイブ
- 協力:星頂山 妙福寺
- 撮影・配信:natural Paradox
- 音響:文結
- スチール撮影:唐亨
第三回 アラブ音楽
祈りが繋げる未来への橋「日本・シルクロードの音楽で紡ぐ祈りのリレー Live配信」 @鈴森山 大経寺
2020年5月5日(火祝)
出演者:
- [ウード]常味裕司
- [パーカッション]立岩潤三
プログラム:
- 「ラクサ・アジーザ」
- 「サマーイ・ナハワンド」
- 「チェチェン・クズ」
- 「Four Sticks」レッド・ツェッペリン
- 「アルジェリアの夜」
「Gift Music :祈りが繋げる未来への橋」第3回目は5月5日(火祝)、品川区にある鈴森山 大経寺から、ウード奏者の常味裕司氏、パーカッショニストの立岩潤三氏によるアラブ音楽の演奏のライブ配信を行いました。
はじめに行われたご住職によるご祈祷はとても迫力のあるもので、日蓮宗独特の木剣祈祷を、カメラに向けて、つまりカメラの前で見てくださっている方々に向け行っていただきました。ご住職から「今だからこそご先祖様から連綿と連なっている自分自身の命に意識を向け大切にすることが、そのまま他者を大切にすることにもつながる」というメッセージをいただきました。
アラブ音楽の演奏では、演奏家のお二人から久しぶりの演奏とは思えないノリの良い演奏を聞かせていただくことができました。演奏終了後の感想では、改めて生音の持つパワーを実感しつつ、演奏家としてこういう状況の中、音を発していくことの価値についてお話をいただきました。
アーカイブ
- 協力:鈴森山 大経寺
- 撮影・配信:natural Paradox
- 音響:文結
- スチール撮影:唐亨
第4回 北インド古典音楽
祈りが繋げる未来への橋「日本・シルクロードの音楽で紡ぐ祈りのリレー Live配信」 @松流山 正伝寺
- [バーンスリー]寺原太郎
- [タブラ]森上唯
- 「バーンスリーと笙による即興演奏」
- 「ラーガ マドバンティ」
「Gift Music :祈りが繋げる未来への橋」第4回目は5月9日(土)、港区にある松流山 正伝寺から、バーンスリー奏者の寺原太郎さん、タブラ奏者の森上唯さんによる北インド古典音楽の演奏のライブ配信を行いました。
ご住職による力強い御祈祷の後、仏教の象徴とも言える蓮の花の例えと共に、新型コロナウィルスまん延の状況下、苦しい状況ではあるが、いつか来る収束の時に大きな花を咲かせられるように、希望を持って今の時期を過ごして欲しいというお話をいただきました。
北インド古典音楽では、はじめに笙とバーンスリーによる即興演奏から始まり、ご住職の蓮の花のお話からインスピレーションを得て「マドバンティ」という花のラーガを、バーンスリーとタブラによる演奏でお届けしました。
アーカイブ
- 協力:松流山 正伝寺
- 撮影・配信:natural Paradox
- 音響:文 結
- スチール撮影:唐亨
第五回 箏
祈りが繋げる未来への橋「日本・シルクロードの音楽で紡ぐ祈りのリレー Live配信」@実相山 正覚寺
2020年5月10日(日)
出演者:
- [箏]市川慎 山野安珠美
プログラム:
- 「調べ三章」沢井忠夫 作曲
- 「斜影」沢井比河流 作曲
- 「鳥のように」沢井忠夫 作曲
- 「龍の悲しみ」市川慎 作曲(初演)
- 「光への扉」石川慎 作曲
「Gift Music :祈りが繋げる未来への橋」第5回目は5月10日(日)、中目黒の実相山 正覚寺から、箏奏者の市川慎さん、山野安珠美さんによるライブ配信を行った。
ご祈祷の後、ご住職のお話で、「こういう非常事態においては、人間のマイナスの感情が出て、それを言葉にして他に広めてしまいがちであるが、そうではなく感謝の感情を努めて持ち、広げることを心がけることで、自他共に心の安心を得ることができる」というお話をいただきました。
箏の演奏では、山野安珠美さんによる沢井忠夫氏の楽曲の艶やかなソロ演奏をいただき、市川慎さんのソロ演奏では市川さん作曲による「龍の悲しみ」を初演していただきました。最後には、市川慎さん作曲による「光への扉」を、二人の迫力のある合奏にてお届けしました。
アーカイブ
- 協力:実相山 正覚寺
- 撮影・配信:natural Paradox
- 音響:文結
- スチール撮影:唐亨
第六回 和太鼓 津軽三味線
祈りが繋げる未来への橋「山部泰嗣 × 浅野祥 特別ゲスト 藤舎推峰」@実相山 正覚寺
2020年8月8日(土)
出演者:
- [和太鼓]山部泰嗣
- [津軽三味線]浅野祥
- [笛]藤舎推峰
- [祈りのインスタレーション]彩蘭弥
プログラム:
- 「神狗(シャンク)」作曲:山部 泰嗣
- 「風の孤独」作曲:山部 泰嗣
- 正覚寺 池田真一住職によるお話・日本画家 彩蘭弥さんによる祈りのインスタレーション紹介
- 「民謡メドレー 豊年こいこい節(宮城)・北千島女工節(北海道)・五所川原甚句(青森)・ソーラン節(北海道)」
- 「祈望祭事」作曲:浅野 祥
- 「魚童子」作曲:土井 啓輔
「Gift Music :祈りが繋げる未来への橋」第6回目は緊急事態宣言開けから動き出した社会への「エンパワメント」の祈りをテーマに、中目黒の実相山 正覚寺から、和太鼓奏者の山部泰嗣さん、津軽三味線奏者の浅野祥さんに加え、特別ゲストに笛奏者の藤舎推峰さんをお招きし、人数限定の演奏会とライブ配信を行いました。
山部泰嗣さん、浅野祥さんよる「神狗(シャンク)」から始まり、「風の孤独」ではゲストの藤舎推峰さんの演奏も加わり、最初のハイライトとなりました。その後の池田住職のお話では、「祈り」について、精神的なものなど「無形」のものの持つ価値についてお話をいただきました。
今回、会場のお客様とライブ配信をご覧いただいている方から「祈り」を寄せていただき、それを元に日本画家の彩蘭弥さんが演奏会中に作品として展示していく「祈りのインスタレーション」も同時に行いました。
後半では、浅野祥さんによる祈りをテーマとした全国の民謡メドレーから祈望祭事へと続き、最後は藤舎推峰さんも加わり「魚童子」で大きな盛り上がりを見せました。
演奏家にとっては半年ぶりの生のお客様に向けた公演となり、お客様からも大きな反響をいただきました。また、今回の公演は新型コロナウイルス感染症予防対策十分に行い、今後の公演に向けたトライアル公演としての意義も大きいものとなりました。
アーカイブ
- 協力:実相山 正覚寺
- 撮影・配信:natural Paradox
- 音響:文結
- スチール撮影:唐亨